災害に強い社会を目指すパートナーシップ
~アルフレッサ ヘルスケア(株)×Haleonジャパン(株) 災害時連携協定締結~

  • (左から)アルフレッサ ヘルスケア(株) 商品本部 商品戦略部 グループ長 兼 発注センター センター長 西岡 篤さん、
    アルフレッサ ヘルスケア(株) 商品本部 商品戦略部 部長 下江 守さん、
    Haleonジャパン(株) 営業統括本部 流通戦略部 グループリーダー 光岡 耕太郎様、
    アルフレッサ ヘルスケア(株) 管理本部 SCM部 ロジスティクスグループ グループ長 本村 祐紀さん

 日本では、地震・台風・豪雨など、様々な自然災害が頻発しており、政府は2025年9月に、南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率を「60~90%程度以上(2025年1月1日時点)」※1と公表しています。確率の高さを踏まえると、災害が発生した場合の被災地支援体制を、平時の段階から整備しておくことが必要です。

 2025年6月に、アルフレッサ ヘルスケア(株)とHaleonジャパン(株)との間で、大規模な地震、自然災害などが発生した場合に、避難所および物資の集積場所等に迅速かつ円滑にオーラルケア用品等の支援物資をお届けするため、災害時連携協定を締結しました。協定締結のキーパーソンである、アルフレッサ ヘルスケア(株) 商品本部 商品戦略部 部長 下江 守さんとHaleonジャパン(株) 営業統括本部 流通戦略部 グループリーダー 光岡 耕太郎様に詳しくお話を伺いました。

※ 1. 2025年9月26日発表 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)について

ご参考:アルフレッサ ヘルスケア株式会社によるHaleonジャパン株式会社との災害時連携協定締結について

先進的な協定締結に挑戦するリーダー達

 「医薬品卸とヘルスケアメーカーによる協定締結は、業界でも先進的な取り組みです」と下江さんは胸を張ります。下江さんは、約25年にわたるお得意様への営業経験を経て、商品戦略部にて6年間、お取引メーカー様の対応窓口を担当し、販売先と仕入先の両方の最前線でキャリアを積んできました。お取引メーカー様と連携した営業に関する施策の立案から全社への展開に至るまでの全てに従事したことで、一般用医薬品をはじめ、オーラルケア用品や生活関連用品等の安定供給に関する提案力や実行力を磨き、社内外の関係者とのネットワークと調整力などを培えたと言います。2025年4月に商品戦略部長に就任し、今回の協定締結では推進役を担いました。

  • アルフレッサ ヘルスケア(株) 商品本部 商品戦略部 部長 下江さん

 一方、Haleonジャパン(株)の光岡様は、同社の営業本部で約10年、その後約4年の営業戦略の立案および実行の経験を経て、「Haleonの製品を日本全国に届け、一人でも多くの方を笑顔にする」ことをモットーに、日々の営業活動に努めています。「実は、私の家族や身近な人たちが、口腔や身体の痛みによって、心から笑顔になれずにいる姿を何度も目にしてきました。多くの方々の毎日の生活や健康に貢献できる製品をお届けすることが、日本中の人々の笑顔につながると実感しています」と光岡様は胸の内を語ります。
 災害時連携協定の検討が始まった初期段階で、下江さんと光岡様は、Haleonジャパン(株)が過去に行ってきた災害支援における課題を振り返ります。医薬品卸企業が強みとして保有する全国ネットワークの物流網と、コンシューマーヘルスケアメーカーの製品力を災害時にどう活用できるかという議論が生じ、「アルフレッサ ヘルスケア(株)とHaleonジャパン(株)の強みを融合させるために、まずは両社の協力体制の構築が必要」という共通認識に至ります。この認識が、支援物資の供給に関するプランニング、運用フローの設計、協定書の骨子作成等の準備において、一貫した方向性を示す基盤となりました。

  • Haleonジャパン(株) 営業統括本部 流通戦略部 グループリーダー 光岡様

災害時はオーラルケア製品が不可欠

 災害時の支援物資で重要なものは、飲料水や食料だけではありません。医薬品、そして高齢者の健康維持に不可欠なオーラルケア製品の安定供給も生命線です。被災地では、水不足やストレス、歯みがきの機会減少などにより、口腔内の細菌が増殖しやすく、特に高齢者は誤嚥性肺炎や感染症を患うリスクが高まります。※2
 光岡様は、「これまでの災害支援でも、特に、義歯ケア製品はお届けできるメーカーが限られていることからニーズは非常に高く、口腔衛生を守り、誤嚥性肺炎や感染症の予防につながるなど、被災者の健康を守るために不可欠な支援物資です。過去の災害支援では、物流拠点から被災地へ支援物資を出荷することができても、途中の交通網がボトルネックとなり、肝心の到着が大幅に遅れてしまったという苦い経験がありました。また、実際に荷物が届いたのか、いつ届けられるのかが不明確だったことは大きな課題でした」と振り返ります。これが教訓となり、全国17か所の主要地域に物流拠点を持ち、医薬品の安定供給を社会インフラとして支えているアルフレッサ ヘルスケア(株)との協業提案につながっていきました。
 「どこで災害が起きても迅速に、必要とされている支援物資を届けたい。そして両社が協力することにより、災害支援の実効性をさらに高め、より一層の社会的責任を果たしたい」という下江さんの強い想いとともに、慎重な協議が重ねられた結果、本協定締結に至りました。

※ 2 出所:大規模災害時の 口腔ケアに関する報告集 厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究推進事業)「大規模災害時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築に関する研究」研究班
https://jsdphd.umin.jp/pdf/nkkk/oralcare.pdf

全国60か所以上の被災地シミュレーションと他部門の協力により実効性を向上

 「災害はいつ、どこで起こるか予測できません。だからこそ平時から物流面のリスク管理を徹底し、必要な支援物資を滞りなく届ける体制が不可欠です」と下江さんは強調します。
 アルフレッサ ヘルスケア(株)の物流拠点には、ハミガキや義歯ケア商品など、Haleonジャパン(株)製のオーラルケア製品100点以上が保管されています。過去、災害発生時には、Haleonジャパン(株)が日頃連携している自治体や医療関連団体から、オーラルケア製品を中心とした支援要請が届きました。その要請に応じ、アルフレッサ ヘルスケア(株)の物流拠点から迅速に出荷し、必要な場合にはHaleonジャパン(株)の在庫も活用する供給体制を構築しました。その体制づくりにあたっては、日本全国60か所以上の被災地を想定し、被災地近隣の物流拠点から商品在庫を支援物資として出荷する数十回以上のシミュレーションを重ねました。
 下江さんは社内の体制を固めるため、商品の受発注システムと在庫管理を統括するアルフレッサ ヘルスケア(株) 商品本部 商品戦略部 グループ長 兼 発注センター センター長 西岡 篤さん、および物流部門を統括するアルフレッサ ヘルスケア(株) 管理本部 SCM部 ロジスティクスグループ グループ長 本村 祐紀さんと密に連携し、シミュレーション結果をもとに議論を重ねました。
 受発注から在庫管理、物流までの職務を中心的に担っている西岡さんと本村さんの知見が加わることで、拠点ごとの在庫商品の種類や数量の確認、災害時に必要な在庫商品の見直し、災害時の交通混乱に対応する多様な配送ルートや運送手段の確保など、シームレスで強固な連携体制が整いました。平時に物流面のリスクを洗い出しておき、そこへの対策を考案しておくことで、絶えず状況が変化する被災地に対しても必要な支援物資を滞りなく届けることができます。
 「支援物資がどこにあって、どこに対して、いつお届けするべきか。これらを最適化するためには関わる部門も広範囲にわたります。他部門のメンバーも主体的に関与してくれたおかげで、協定の実効性が見る見るうちに向上していったことに感銘を受けました」と下江さんは振り返ります。

現場の声が生み出した、状況に応じて柔軟に対応できる体制

 「被災地に向けて、迅速かつ正確な物資供給を確実に行わなければならないというプレッシャーがあり、強い不安を感じることもありました。特に、実際のシミュレーションで配送遅延が起こる可能性を目の当たりにした時、その不安は一層大きくなりました」と下江さんは協定立案時の心境を語ります。しかし、予期できる課題については地道に解決策を練り続け、予期が難しい未知の課題については関連する他部門と協力しながら洗い出しました。災害対策本部をどこに設置するのか。その連絡窓口は誰が担うのか。情報の集約と連携を速やかに行うにはどのようにすればよいのか。被災地域の避難所や支援物資の集積場所はどこなのか。支援製品をどのように指定し、品目と数量をいかに決定するのか。品目や数量が不足している場合の対応はどのようにするのか。運送費の負担はどのように決めるのか。下江さんは、ひとつずつクリアしながら前進させていくことで、不安を乗り越えて使命感を強めていきました。他部門も巻き込んだ議論を数十回繰り返し、在庫状況、物流体制、自治体や医療関連団体等からの要請フローなど総合的で実効性のあるスキームが構築されていきました。
 能登半島地震を想定したシミュレーションでは、被災地へ支援物資をお届けするリードタイムを短縮し、迅速にお届けできることを確認できました。しかし、想定される被災地や支援を行う物流拠点などシミュレーション上では細かく設定しているものの、災害は、いつ、どこで、どのような規模で起こるのか、その予測ができません。「想定通りには起こらない災害だからこそ、より正確な情報を迅速に得て、状況に応じた柔軟な対応ができるように、運用フローの設計に相当の時間をかけました。関連部門のアイデアや現場の声を丁寧に聞き、それを一つずつスキームに反映し、臨機応変に対応できる体制をつくり上げました。自社内外のメンバーの多様性が生んだオープンイノベーションです」と下江さんは語ります。

共通目標に向かって社会的責任を果たすパートナーへ

 今回の災害時連携協定は、「従来の医薬品製造業と医薬品卸売業という事業上の役割の違いを超えて、災害支援という共通目標に向かって社会的責任を果たすパートナーとして、新たな一歩を踏み出しました。『協働関係』を超えた『共創関係』へ進化したのです」と下江さんと光岡様は声を揃えます。
 「ビジネスが先ではなく、まず困難に直面している被災者を一人でも多く笑顔にしたい」――この言葉はHaleonジャパン(株)から提案時に伝えられたもので、下江さんの心に深く響いたといいます。こうした想いを実現し、持続性を持たせるためには、社会貢献面と同時に事業面の持続可能性を両立させることが肝要です。
 両社は、被災者支援という社会貢献だけを行うのではなく、安定した供給体制や効率的なオペレーションを構築することで、事業の持続性とその成長も追求しています。「Haleonジャパンさんからの社会貢献を主眼としたご提案を実行に移すことで、社会と事業の両方の価値を共創する意義を改めて実感するとても貴重な機会となりました」と下江さんは語ります。

  • (左から)協定提案時を振り返り、談笑するHaleonジャパン(株)の光岡様と下江さん

平時の「当たり前」を有事でも「当たり前」になる未来を目指して

 アルフレッサ ヘルスケア(株)の持つ全国規模の物流ネットワークと、Haleonジャパン(株)の専門性と商品力を組み合わせることで、迅速で確実に対応できる災害支援体制が構築できました。アルフレッサ ヘルスケア(株)のパーパスである「『健康』×つなぐ×しあわせ」と、Haleonのパーパス「Deliver better everyday health with humanity. (もっと健康に、ずっと寄りそって)」が融合することで、企業の枠を超えて人々の健康と地域社会を守る「社会インフラ」としての「共創」が実現しました。アルフレッサのグループ理念「すべての人にいきいきとした生活を創造し、お届けします」の実践でもあります。
 「今後も共創関係を強化し、平時には当たり前に提供できるヘルスケア商品を、有事でもニーズのあるところへお届けでき、人々が欲しいものが平時と同じように手に入る未来を目指してまいります。被災地で困難な状況にある方々を皆で支えるという姿勢を大切にしながら、企業の枠を超えた共創のケーススタディとして、業界全体の成長にも貢献していきたいです」と下江さんは未来への展望を語ります。

  • (左から)共創関係を強化させていきたいと未来の展望を語る下江さんとHaleonジャパン(株)の光岡様