明祥㈱、富山市と「富山市民の健康づくりに関する協定」を締結
~「地域の人々の健康と幸福に貢献する」 理念が生み出す新たなチャレンジ~

  • 協定締結に携わった明祥㈱ 富山支店のメンバー

 石川県金沢市に本社を置く医薬品・医療機器・試薬・化成品原料等の卸売業を行っているアルフレッサグループの明祥㈱は2025年2月18日、富山県富山市との間で、すべての市民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現を目指す「富山市民の健康づくりに関する協定」※1を締結しました。この協定は、富山市民の皆様の健康づくりに係る施策の充実を図るため、富山市と連携し、健康イベントの開催や、ワクチン接種および認知症に関する正しい知識の普及啓発等を行い、認知症の早期発見・早期診断につながる効果的な施策を検討し、富山市へ提案を行っていくものです。
 「この協定は、これまで築いてきた富山市との信頼関係があったからこそ実現しました」と同社 執行役員 医薬営業本部 営業推進部 地域連携部 部長の北野 寛さんは言います。協定締結に至るまでの道のりは平坦ではなく、行政の関連部署との連携や複数のご担当者へのアプローチに多くの努力を要したという北野さんに、詳しくお話を伺いました。

  • 明祥㈱ 執行役員 医薬営業本部 営業推進部 地域連携部 部長 北野 寛さん

※1 ご参考:明祥株式会社が富山市と「富山市民の健康づくりに関する協定」を締結

「富山市民の健康づくりに関する協定」締結のきっかけ

 2024年4月、富山市保健所 所長 瀧波 賢司様から、富山市の医療従事者および市民を対象としたワクチン研修会の開催方法について、北野さんへ相談がありました。そこで、富山市保健所の地域健康課や保健予防課が、生活習慣病の予防や健康に関する知識の普及を目的とした健康教室を行っていることを知り、北野さんはワクチン研修会だけでなく、明祥㈱が北陸地域で実施している健康測定機器を活用した「健康フェア」の共同開催を瀧波所長に提案しました。この提案に、瀧波所長も賛同され、すぐに富山市の企画管理部へ共同開催に向けた相談が行われました。さらに、北野さんは富山市議会関係者に明祥㈱が行ってきた取り組みとその背景にある同社の「地域の人々の健康と幸福に貢献する」理念を紹介し、提案に対する協力への賛同を得ました。
 こうして、富山市の関係部門、市議会関係者で、富山市の地域医療体制の強化や市民の健康づくりに資する活動を円滑に進めるため、本協定締結に向けた検討がスタート。最終的には富山市市長 藤井 裕久様も参画され、総勢16名が関与するプロジェクトとなりました。

  • (左から)富山市保健所 地域健康課 課長 相川 智昭様、所長 瀧波 賢司様、
    明祥㈱ 地域連携部 部長 北野さん

信頼関係構築は、コロナワクチン特例臨時接種から

 富山市との連携は、新型コロナウイルスワクチンの特例臨時接種開始の時期にまでさかのぼります。「明祥㈱が富山市のワクチン管理・移送業務を受託したことから富山市との密な連携が始まりました」と北野さんは言います。2021年2月、富山市保健所 地域健康課(当時のコロナワクチンご担当部署)と管理・移送業務についてのスキームの検討を開始しました。現場ではワクチン需給の混乱が続いている状況でした。ワクチン管理・移送業務は、厳格な温度管理が必要になることから、富山市保健所 地域健康課 課長 相川 智昭様と幾度となく検討を重ね、効率的でありながらも管理ミスが起きにくいスキームを作り上げました。
 ワクチン接種を行う医療機関に対し、富山市保健所、富山市医師会、明祥㈱が共同でWeb説明会を実施し、迅速・正確・安全・安心な移送へのご協力をいただくとともに、ワクチンに関する情報提供と配送や納品等の詳細説明を行い、ワクチンの発注方法や発注タイミング、移送スケジュール、納品時のルール等については、明祥㈱が解説し、ワクチンの発注方法には、電話など口頭による発注ミスをなくすために、アルフレッサグループの医薬品発注システム「alf-web」を一元的に活用することにしました。関係者に操作マニュアルを作成・配布するとともに、ポイントとなる部分については、レクチャーで補いました。

  • 特例臨時接種期間を振り返る(左から)富山市保健所 地域健康課 課長 相川 智昭様、
    明祥㈱ 地域連携部 部長 北野さん

2時間以内での移送を綿密にシミュレーション

 一方、大切なワクチンをお届けする明祥㈱のMS※1に対しても、ワクチン管理・移送業務のルール説明と作業シミュレーションを徹底しました。
 ワクチン管理については、最大-80℃の冷凍温度帯で厳格な温度管理を徹底するため、ディープフリーザー※2から取り出すタイミングを細かく規定しました。移送業務については、200軒以上ある富山市の接種医療機関をエリアごとの3グループに分けた後、温度管理の逸脱がないように、富山支店の冷蔵庫内で担当MSがグループごとのルートに合わせて仕分けました。そして、納品先でワクチンの取り扱いを速やかに行っていただけるよう、明祥㈱で独自開発したバイアルホルダー※3に医療機関ごとに詰めました。これらの行程のシミュレーションを念入りに実施し、結果、スキームで定めた「ディープフリーザーから取り出してから、2時間以内での移送完了」を実現することができました。
 当時、ワクチンの管理・移送業務に携わっていた、明祥㈱ 富山支店 富山エリア 担当MSの土田 駿さんは、「仕分け・配送時は、2℃~8℃の冷蔵温度帯で防寒着を着込み、なおかつ時間が定められた中での業務に最初は戸惑い、苦労しました」と振り返り、「しかし、医療機関の方々から感謝されたことが、やりがいにつながっています」と仕事の喜びを語ります。

  • ワクチン管理・移送業務に携わった明祥㈱ 富山支店 富山エリア 担当MSの土田 駿さん

※1 MS: マーケティングスペシャリスト

※2 ディープフリーザー: ワクチンを保管するための超低温冷凍庫

※3 バイアルホルダー: ワクチンのバイアル(容器)を安全かつ効率的に収納・運搬するために、明祥㈱が独自に開発した専用の器具

信頼関係構築と実績が導いた「富山市民の健康づくりに関する協定」締結

 2024年3月末までの約3年にわたる特例臨時接種期間中、富山市保健所と医療機関ごとの接種状況を確認しながら国への発注を行いました。全国的なワクチン不足が発生した際にも、医療機関ごとの接種状況を把握して振り分けを実施するなど、協働を進めました。特例臨時接種期間終了まで、移送ミスとワクチン廃棄がゼロという結果となり、富山市、富山市保健所をはじめ、医療従事者の皆様からも高い評価をいただくことができました。「これまでの富山市保健所様との密な連携と、実績に対する評価が『富山市民の健康づくりに関する協定』の締結につながったと思います」と北野さんは振り返ります。
 このような協定締結は、北野さんにとって初めての経験で、情報収集等の事前準備に時間を費やしたと言います。また、大阪府箕面市との包括連携協定の実績があるアルフレッサ㈱ 吹田支店と連携し、アドバイスを受けるなどアルフレッサグループ内の知見も活用しました。
 北野さんは、富山市民の健康づくり、生活習慣病予防、高齢者福祉、地域包括ケアなどの重要な役割を担っている富山市保健所 保健予防課、地域健康課、富山市役所 長寿福祉課、まちなか総合ケアセンターに対して、普段どのような取り組みをされ、どのような課題をお持ちなのかをヒアリングし、そこにあるニーズに対して「明祥㈱が貢献できること」を説明していきました。ワクチンの管理・移送業務で培われた信頼関係もあり、明祥㈱と富山市で新しく手掛けていきたいことについて何度も対話を重ね、ついに2025年2月に「富山市民の健康づくりに関する協定」の締結を実現しました。
 「社業を通じて地域の人々の健康と幸福に貢献する」という明祥㈱の理念を常に念頭に置いていたという北野さん。「私たちの仕事は、ビジネスとして医薬品を提供するだけではなく、地域の人々の健康を支えるために、何ができるかを常に考え続けることが大切だと改めて気付かされました」と語ります。

未来の地域社会の健康を見据えて

 2025年4月、明祥㈱に北野さんを部長とした「地域連携部」という組織が立ち上がり、自治体とのさらなる連携を推進していく体制が整いました。明祥㈱ 富山支店 支店長 前川 朋洋さんを中心に、富山市内にある7ヵ所の保健センターとまちなか総合ケアセンターそれぞれの担当者を決めました。前川さんは、担当者の皆さんと各センター訪問を通じて、現場のニーズを直接把握し、協定内容の詳細を、一つひとつ丁寧に具体化に向けて動いています。「地域の学校、企業、医師会、自治体と連携したプログラムを作り、未来の富山市を創っていく子どもたちや若者に、健康の重要性を伝え、健康意識を高めることを目標として、地域社会の皆様の健康を維持・向上させるために重要な役割を果たしていきたい」と前川さんは語ります。

  • 明祥㈱ 富山支店 支店長 前川 朋洋さん

VRを活用した認知症対策のイベントも開催

 新しい取り組みも始まっています。明祥㈱ 営業推進部の田中 浩彦さんと松浦 彰さんは、長寿福祉課に対して認知症早期発見・早期診断につながる仕組み作りとして、VR(Virtual Reality:仮想現実)を活用した認知症対策の提案を行い、富山市内にある32ヵ所の地域包括支援センターでのイベント開催を進めています。イベントでは、VRゴーグルを装着して認知症の方の行動を体験するトレーニングを行い、参加者からは「認知症への理解が進んだ」、認知症の患者様のご家族からは、「体験の機会を持ててよかった」、「(患者様との)接し方を見直すきっかけになった」などの感想が届いており、田中さんと松浦さんは、「富山市民の皆様に、認知症への理解が少しでも深まるように継続して活動していきたい」と意気込みを語ります。

  • (左から)明祥㈱ 営業推進部 田中 浩彦さんと松浦 彰さん

  • VRを活用した認知症の方の行動について理解を深める体験トレーニングの様子

能動的に提案していく姿勢を大切に

 北野さんは、本協定締結を進めるにあたり、大切にしてきたことが1つあると言います。受け身ではなく、明祥㈱からどんどん提案していこうという能動的な姿勢です。そのために、北野さんは、富山支店のメンバーに、「日々のコミュニケーション」と「受け身でなく先手を打つ洞察力と行動力」そして「社内外との連携と協力」を重要視して欲しいと伝えています。協定締結書にも「富山市への提案を行う」という文言を明記し、そこに北野さんの決意が示されています。
 明祥㈱のこのチャレンジは、アルフレッサグループ理念の「事業活動を通じて地域社会に貢献します」と、明祥㈱の理念「社業を通じて地域の人々の健康と幸福に貢献する」の実践です。「富山市や地域社会とのさらなる連携と信頼関係を構築し、持続可能な社会の実現を目指すとともに、他の地方自治体にとっての健康づくりのモデルケースとなり、アルフレッサグループ内においても知見を共有していきたい」とメンバーのチャレンジはこれからも続きます。

  • 「連携と協力」で理念実践にチャレンジしている明祥㈱ 富山支店のメンバー