再生医療を未来へつなげる挑戦
~セルリソーシズ㈱×韓国CDMO企業ENCellの協業を通じて~
再生医療関連事業
再生医療関連事業の推進を担うセルリソーシズ㈱ 事業開発部の西尾香織さん
アルフレッサグループで再生医療関連事業を行うセルリソーシズ㈱は、国内外のパートナーと再生医療の研究・開発から製造までを支援する仕組みづくりを連携して進め、患者様への新たな治療選択肢の拡大と医療の発展への貢献を目指しています。2025年12月、細胞・遺伝子治療製品の開発・製造をグローバルに展開する韓国の大手CDMO※1企業ENCell Co., Ltd.(以下ENCell)と戦略的パートナーシップ契約を締結しました。この契約を通じて、両社は相互に顧客紹介を行い、それぞれの市場における新たなビジネス機会の創出を図り、再生医療分野における事業拡大を目指しています。
本契約の締結において、中心的な役割を果たしたのが、セルリソーシズ㈱ 事業開発部 西尾香織さんです。アルフレッサグループの医療用医薬品等卸売事業を行うアルフレッサ㈱で、MS※2としてキャリアをスタート。2024年にセルリソーシズ㈱に出向し、再生医療事業の立ち上げという挑戦への新たな一歩を踏み出しました。再生医療等製品が形になる前の段階でのアカデミア(大学・研究機関)への営業活動、学会出展、海外企業との折衝や協業──。これまで経験のなかった業務にチャレンジし、一つひとつ着実に乗り越えている西尾さんにお話を伺いました。
※1 CDMO:(Contract Development and Manufacturing Organization)医薬品の製造工程の開発から、治験薬や商用製造までを受託する機関
※2 MS:(Marketing Specialist)医薬品の卸売業における専門知識を持った営業員
ご参考:セルリソーシズ株式会社による ENCell Co., Ltd.との 戦略的パートナーシップ契約締結について
視野を広げるチャンスとして踏み出した、新たなキャリアへの一歩
大学卒業後、アルフレッサ㈱へ入社した西尾さんは、MSとして東京都と神奈川県で9年間勤務しました。MSの主な役割は、お得意様である医療機関(病院や診療所等の医師・薬剤師・看護師など)に対して、必要な医薬品を、必要な時に届けるとともに、必要な情報も正確に届けることで、医療現場の円滑な診療を下支えすることでした。
「MSの仕事で特に印象に残っているのが、社内メンバーとの連携です。配送担当者や内勤の事務スタッフが、お得意様との何気ない会話や電話対応で感じ取った変化を共有してくれたことで、対応の質とスピードが高まり、その積み重ねが会社としての信頼につながっていきました」 正確な情報提供や誠実な対応を、組織として当たり前に積み重ねていく、そのプロセスの中で信頼は個人の成果ではなく、チーム全体の協力によって形づくられるものだと学びました。「MSの活動は、決して一人では成り立たないことを、現場で強く実感しました」と西尾さんは振り返ります。
MSの経験を重ね、西尾さんは、「これまで培ってきた現場の視点や信頼関係構築の経験を、医療を取り巻く環境が変化する中でどう活かせるのか」と今後のキャリアを考えるようになりました。
転機となったのは、セルリソーシズ㈱が実施したアルフレッサグループ内人財公募でした。再生医療事業の拡大を目指す同社が、2024年4月入社に向けて人財を募集したことを知り、これまでとは違う再生医療等製品の営業が経験できることと、セルリソーシズ㈱での事業立ち上げのプロセスに挑戦できることに魅力を感じたと言います。しかし、「これまでの経験が、通用するのかという不安もあり、踏み出すには勇気が必要でした」と西尾さんは語ります。熟考を重ね、視野を広げるチャンスと捉えて、セルリソーシズ㈱への出向に手を挙げました。
アルフレッサ㈱への入社からこれまでを振り返る西尾さん
専門知識より、まずは全体の流れを掴む
「MSだった頃のように、お得意様の声を起点に営業活動してきた経験が活かせる」と考えてセルリソーシズ㈱に参画したものの、「当初は、自分が組織に貢献できるのか、悩みました」と率直に語る西尾さん。西尾さんにとって、再生医療やCDMOに関する高度な専門分野は、これまでの医療用医薬品卸のMSとは求められる知識が異なっていたと言います。
面談や会議では、「分化能(細胞がどのような細胞へ変化できるかを示す性質)」、「表面抗原マーカー(細胞の表面にある分子で、細胞の種類や状態を示す指標)」、「テックトランスファー(開発した製造方法を別の設備や組織へ移管すること)」といった専門用語が飛び交っていました。それらを理解できないままでは、話のポイントがどこにあるのかが判断できませんでした。加えて、再生医療等製品が実用化されるまでの開発プロセスを把握できていなかったため、アカデミアの先生方が今どのフェーズの話をされているのかを理解できず、コミュニケーションに苦労しました。
そこで西尾さんは、まず医薬品が世に出るまでに、研究、開発、製造と工程が進む中で、どのような関係者が関わり、どの段階で品質や安全性が確保されていくのかを把握することから始めました。西尾さんにとって特に重要だったのは、誰がどこまで責任を持ち、次にどう引き渡していくのかを理解することでした。全体の流れを知ることにしたのです。その流れの中で、どの関係者の間に立ち、プロジェクトを前に進めるためのどのような役割が、どのタイミングで求められているのかが分かるようになったと言います。「全体像を掴んだことで、専門外の分野にも臆せず踏み出せるようになりました」と西尾さんは振り返ります。
「まずは全体像を掴む」ことで、果たすべき役割が見えてきたと語る西尾さん
セルリソーシズ㈱で様々な経験を積み、視野を広げたいと考えていた西尾さんは、「MSの経験を生かしつつ、新しいことにどんどん挑戦したい」と周囲に宣言し、営業活動で必要となる受注票・納品書といった各種帳票のフォーマットの整備や社内業務フローの整理に取り組みました。これらの帳票は、誰がいつ何を依頼して、どのような条件でどのように提供するのかを明確にし、社内外のやり取りを円滑にするための基本的なツールです。フォーマットの整備とは、必要な項目や承認ルート、記載方法をそろえることで、担当者が変わっても同じ基準で仕事をスムーズに進めることができる仕組みです。これらが、事業立ち上げ期における重要な役割を果たしました。
力を入れたのが、アカデミアへ試料(研究用の細胞サンプル)を提供するための仕組みづくりです。これらの細胞は、治療に直接使うのではなく、研究や試験に使用される非臨床向けです。意図しない使われ方や管理となる恐れがあるため、使用目的、利用範囲、保管方法、廃棄手順を事前に決めておく必要があります。こうした条件を整理して関係者の認識をそろえるために取り交わす文書が MTA(試料提供契約書)です。この文書には、知的財産や機密情報、万が一の事故に関する責任など、法的な判断が必要な項目も含まれます。そのため西尾さんは弁護士と相談しながら、自社の実務と照らし合わせて文書を整備していきました。「安心・安全・誠実」というグループ理念を実践していくための欠かせない土台づくりでした。
「事業が始まったばかりで前例がなかったので、契約や業務の進め方を、積み木を一つずつ積み上げるような感覚で形にしていきました」と、西尾さんは穏やかに微笑みます。
海外企業との協業に向けたコミュニケーション力
その他、西尾さんは、日本で開催されたバイオテクノロジー展「BioJapan」での海外企業とのパートナリング業務や再生医療学会総会でのイベント運営を担当しました。
再生医療学会総会に出展したセルリソーシズ㈱のブース。バイオ・医薬品分野の関係者との対話が行われました
日本市場を見据え、協業の可能性を探る
ENCellとのパートナーシップ構築は、2024年10月に米国で開催された細胞・遺伝子治療分野の最新動向や協業の可能性について意見交換が行われる国際イベント「Cell and Gene Meeting on the MESA」でのパートナリング活動がきっかけで始まりました。その後、ENCellとの実務窓口を西尾さんが担当し、2024年12月には韓国のENCellを訪問。製造施設の見学や対話を通じて、事業に対する考え方や強み、抱えている課題を共有するとともに、企業文化についてもオープンに語り合うことで相互理解を深めました。その後も定期的にミーティングを行い、信頼関係を構築していきました。
韓国のENCell 訪問時のひとコマ。施設見学と対話を通じ、相互理解を深めました
論点を整理し、相談の質を高める
ENCellとの交渉中、自身の判断がプロジェクト全体に与える影響の大きさを強く意識しつつも、「関係者が多く、多くの論点がある中で、どこまでを自分の判断で進め、どの時点で周囲に共有すべきか、考え込んでしまう場面がありました」と振り返ります。相談すれば支援を得られることは分かっていても、論点が整理しきれないままでは、かえって相手の時間を取ってしまうのではないか―。そうした迷いに気付いた上長や周囲のメンバーが声をかけてくれたことで、MSだった頃に学んだ早めに情報を共有し、周囲と協力しながら進める重要性を思い出したと言います。これがきっかけとなり、「何が分かっていないのか」、「どの点について意見を求めたいのか」などを相談するようになりました。「セルリソーシズ㈱への出向で、一人で答えを出すのではなく、チームで協力して、チームとしての最適解をつくる役割を担えるようになってきました」と西尾さんは話します。
ENCellとの打ち合わせに向けたチームミーティングの様子
左から 経営企画部 有田夏怜さん、西尾さん、人事総務部 會田香里さん
戦略的パートナーシップ契約の締結は、ゴールではなく、これからがスタート
セルリソーシズ㈱での日々は、「決められた枠組みの中で判断するのではなく、前例のないテーマについて考えることが多く、見える景色が大きく変わりました」と西尾さんは目を輝かせて話します。
西尾さんの人柄を社内メンバーに尋ねると、「丁寧に物事を進める人」、「考えたことを形にできる人」、「誠実さと温かさを感じる人」という声が返ってきます。
「ENCellとの戦略的パートナーシップ契約の締結はゴールではなく、これからがスタートです」と西尾さん。今後も、製薬企業との協議を通じて、事業化に向けたパートナー探索や協業の可能性を広げていく挑戦は続いていきます。
ゴールではなく、これからがスタートと西尾さんの挑戦は続きます
セルリソーシズ㈱取締役 鈴木さんのコメント
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セルリソーシズ㈱ 取締役 鈴木 明さん 西尾さんは、これまで経験のなかった再生医療・CDMOという分野において、果敢に挑戦し、慣れない業務にも一つひとつ着実に取り組んできました。専門性の高い領域や海外パートナーとの折衝など、難易度の高い業務であっても真摯に向き合い、周囲を巻き込みながら前に進めてくれています。
ENCellとの契約締結は大きな成果ですが、これはあくまでスタートです。今後は、この契約を具体的な事業展開につなげていくフェーズに入ります。引き続き挑戦を恐れず、自身の強みを発揮しながら、事業の成長を加速してくれることを期待しています。
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事業成長の加速を宣言する西尾さん